16 March 2010

最近読んだ本5冊

認識とパタン

認識とパタン (1978年) (岩波新書)

認識とパタン (1978年) (岩波新書)

古い本なのですが, こちらのエントリに非常に興味をひかれたので読んでみました. この本は大当たりでした. 絶版でプレミアがついているらしく購入しようと思うと大変らしいのですが, 図書館でなら比較的簡単に手に入ると思います (板橋区の図書館だけで3冊蔵書がありましたし, 学生の人なら学校の図書館にあると思います).

題名からも分かる通りコンピュータサイエンスの"パターン認識"の話なんですが, パターン認識の技法を説明する"how"ではなく, パターン認識とはなにかという"what"をあつかっている本です. (そのため, パターン認識や機械学習の知識を前提としていないので, 分野外の自分でも全く問題なく読めました). この"パターン認識とはなにか"という問に対する洞察の深さがこの本の見所です. 情報科学だけでなく古代ギリシアの哲学から心理学, 神経生理学, 物理学, etc... にまで言及しています.

特に面白いなと感じたのが, パターン認識(および計算機の人工知能的な応用すべて)にはセンスが必要だという話です. パターン認識は個体を類(クラス)に分ける作業なんですが, この"類"は人間が考え出す必要があるものです. 著者は, 本来ものとものとの類似性に高低はないということを"みにくいアヒルの子の定理"というオリジナルの理論をもちいて説明します. そして物と物との間に類似性を与えているのは人間の価値体系だと述べています. たとえば, 世間にはいろいろな種類の犬がいますが, 同じ犬種の犬であってもそれぞれの個体は微妙に異なっています. しかしいちいち全ての犬の個体をべつべつに扱っていては, 人間の処理能力の限界を超えてしまいます. なので, それぞれの個体を"犬"というクラスに分類して, 人間の生活にとって重要でない情報を無視できるようにしているわけです. 同じような現象は眼の働きにもみられます. 眼は光の情報をそのまま脳に伝えるのではなく, 画像中の輪郭付近の情報を強調して脳に伝えています(マッハバンド - Wikipedia). これは生物の生存にとって物と物との境界の情報が重要であったためこのような作用がおこっていると考えられています. このように, クラスは"そのように分類した方がこの応用にとっては有用であるとか便利である"という基準で決められるものです. そしてこのようなクラスを作り出す作業には人間に恣意性が数多く入り込みます. ここでそのひとのセンスがでてきます. この作業は論理的に考えるだけでできるものではなく, むしろ芸術家のようなセンスやひらめきに頼るものです. この部分が非常に逆説的に感じて面白かったです.

いかにして問題をとくか

いかにして問題をとくか

いかにして問題をとくか

ずっと積読だったのですが, 飛行機の中でよみました. マイクロソフトの全社員はこの本を読むという謳い文句に興味を持ったのがきっかけです.

問題を解きたい場合に, どうアプローチすればよいのか. 最終的には結局"ひらめき"が大事ということになるんですが, そのなかでも様々な問題解決に共通してあらわれる方法をパターン化しています. またここで扱っている"問題"とは主に数学の問題(テストの問題のような変数の答えを求める決定問題と証明問題の2種類)ですが, それに限らず問題解決一般に適用できる内容です. なかでも特にソフトウエアとの親和性は抜群だと思います. 読んでいて思い当たる部分やなるほどと思う部分がたくさんあり, マイクロソフトの逸話も納得できる内容でした.

一番大事なことは裏表紙のリストにすべてまとまっているので, 気になる人はそこだけ読んでみてもいいかもしれません.

日本人の英語

日本人の英語 (岩波新書)

日本人の英語 (岩波新書)

スゴ本さんのところの”大学教師が学生に勧める本シリーズ”でよく挙がっていたので気になっていた本です. 確かに非常に面白く, そして役に立つ本でした.

著者のマーク・ピーターセンは明治大学で助教として教鞭をとっていたこともある人だそうです. 教師としての仕事だけではなく, 日本人による英語論文の添削の仕事もよく行っていたようで, その経験をもとにして本書が書かれています.

この本は(1)日本で, (2)主にwritingの能力を鍛えたいと思っている人に非常にお勧めです. 上記のような著者の経歴から, 国際会議に論文を投稿する学生・研究者の人にはとくに良いと思います. ただ単に伝わればいいやという英語ではなく, より文章として自然で, 子供っぽくなく論文らしい英文を書くためのエッセンスが詰まっています. 逆にbroken englishが標準となっている場面(OSSのコミュニティとか?)で活動したい人や, 対面コミュニケーションを鍛えたい人, 英語初学者, すでに英語圏に住んでいる人にとっては趣旨が違うかもしれません. わりと細かい話も多いので, そのような人達はこの本で座学するよりも, がんがん実戦でコミュニケートして行った方が手っ取り早く身になると思います.

この本がとくにユニークで優れている点は, 英語圏の人たちが無意識・暗黙に持っている言語の感覚や法則を, 非常に明快に説明してくれているところです. これが本当にすごい. ふつう自分のネイティブの言語は, ほぼ無意識にニュアンスで使うことができるので, 細かい使い分けやニュアンスをきちんと文章にして説明するのはとても難しいと思います. 本書を読むことで, 英語ネイティブの人たちがどのような感覚で英語を使っているのかが分かるようになります. とくに最初の章のチキンの話は抜群に面白いので, 手にとったときはここだけでも読んでみると良いと思います.

快適睡眠のすすめ

快適睡眠のすすめ (岩波新書)

快適睡眠のすすめ (岩波新書)

主張していることにとくにびっくりするようなことはないんですが, きちんとデータと根拠を示して説明してくれているので, 安心して読み進めることができます. この手の本にありがちな, "これほんとかよ"っていう胡散臭さが無いのが良かったです.

WEB+DB PRESS Vol.55

まだ全部は読んでないんですが...

特集2のHTML5実践入門. 矢倉さん・白石さん・羽田野さんというビッグネームによる記事で, 内容は網羅的で良かったです. 白石さん羽田野さんそれぞれ最近本も出されたので, そちらも気になります.

特集3のモダンネットワークプログラミング入門. 未読ですが期待してます.

宮川さんのPSGI/Plackの記事とか, バッドシグナル通信も面白かったです. アルファギークに会いたいはえとらぼの面々で, perl超人の皆さんが出ていました. ちなみにアルファギークに会いたいは前回のgitの濱野さんの回が史上最高に面白かったです. gihyo.jpのページで公開されているので未読の方はぜひ.

今月でたくさんの連載が最終回を迎えたので, 次回からの新連載が楽しみです.