19 Jan 2013

日本語作文技術を読んだ

日本語作文術 (中公新書)

日本語作文技術を読んだ. 情報を読者に伝達することが目的の “実用文” の書き方をこの本は対象としている. 扱っているテーマや内容は有名な木下是雄の “理科系の作文技術” と似たものだ.

この本はひとつひとつの”文”, 文が集まってできる “段落”, 段落を組み合わせる “論証”, 最後に “定形表現” の四部構成になっている. 文章を構成する最小要素の “文” からボトムアップに解説はすすむ. いかにして伝えたい情報をわかりやすく・間違えなく・説得力をもって読者に伝えるか, いずれの章も共通してそのノウハウを解説している. 最後の “定形表現” はオノマトペや慣用句, ことわざなど, 筆者おすすめの定形表現がまとまったリストだ. ありきたりな表現になってしまうので, 一般的な文章の指南書では定形表現をつかわないことがよしとされている. しかし情報の伝達をいちばんの目的とした “実用文” では, むしろ定形表現を積極的につかうことで, 内容が伝わりやすくなり洗練されるという. この点は本書のユニークなところだ.

以下は読書メモ:

  • 一文は短く
  • 文節は長い順に並べる
  • 修飾語
    • ひとつの被修飾語にたいして修飾語が複数ある場合は長いものを前にする
    • 修飾語と被修飾語はなるべく近づける
    • 順番によっては文章があいまいになるので注意する
  • 読点はむやみに打たない. 文の区切りに読点をいれたほうが読みやすくなる場合にだけ打てばいい
  • “は” と “が”
    • “は” は他との比較というニュアンスが入る. “が” はそのものに対してだけ述べている
  • 主語中心構文と述語中心構文
    • 日本語は主語が自分自身になるほうが自然で, 無生物主語の文章が苦手
    • 抽象的な概念にかんして書く場合などは翻訳調の文章にしたほうが自然になることもある
  • 文末に気をつける
    • “と思う” で終わる文だらけになるのを避ける. “だ”, “である” と言い切ればいい
    • 文末が単調になりがちなのでバリエーションをもたせる
    • 疑問形にする
    • 否定形にする
    • 文をいったん終わらせてから言い足す
    • 倒置法を使う
    • 体言止めにする
  • ひらがなを多くする
    • PC のせいで漢字が多くなりやすいので意識する
  • 文体を統一する
    • 常体と敬体は混同しない
    • 原則は常体

段落

  • 文章は主張と論拠で構成する
  • 段落は文章の意味の切れ目
  • ひとつの中核文と補強文で成る
  • 各段落の長さが異なっているほうがよしとする文化もある
  • 基本は結論を先に書いて, 続く文で主張を補強する
  • 補強文
    • 中核文の補足や説明
    • 例をあげる
    • 根拠をしめす
    • 他の事例との比較
    • 中核文を別の視点からのべる
    • 段落のしめくくり. 繰り返して主張を述べたり, 次の段落へのつなぎ
  • 中核文
    • 段落の内容の要約
    • これが基本
    • 段落の流れの予告
    • “ここでは 3 つの例を考えてみる” などこの段落で何をするか述べておく
    • 読者の関心をひく
    • 疑問形など

論証 (段落の構成)

  • 演繹と帰納
    • 学術文章と違って引用やことわざを論拠にしてもいい
    • 確固たる法則があるのか, 手元にデータが豊富にあるのかで, どちらの論証法になるかは自然と決まるはず
    • 演繹的な文章のほうが断定的で悪く言うと押し付けがましい雰囲気なりがち
  • 起承転結に拘る必要はない
    • 原則は結論を先にのべること
  • 論を展開する際のチェックポイント (段落でも同じ事がいえる)
    • それは何かを詳しく説明する
    • それを根拠付ける法則的なものはあるか
    • それを例証する経験的なものはあるか
    • それはどういう問題 (展望・影響・結果) をもたらすか
    • それを説明する理由・原因はあるか
    • それと似た事例はあるか. 時間をさかのぼるか, おなじ時期の別の例
    • それと反対の事例はあるか