12 Jun 2013

DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門 を読んだ

もはや RTB 業界の教科書にもなっている本書だが、遅ればせながら読了。さすがに新しい情報はほとんどなかったが、知識の整理と再確認になった。

本書は RTB を用いたマーケティングについて語ったもの。テクノロジーやサイエンスではなく、あくまでマーケティングの視点から語られているものだ。筆者は業界でも著名な横山隆治氏だ。彼の有名なブログを読んでいてもわかるが、徹底した現場の経験・知見をもとに語られているため、まったく空論ではなく実践的で非常に面白い。反面、内容が体系だてて整理されているというよりは、トピックスの羅列的になっているとも言えるが、それを上回る充実した内容だ。

構成としては DSP/RTB とはどのようなものでどのような仕組みかの解説と、それを用いてどのような戦略でマーケティングを実施するかの二段構えだ。それに加えて実際の国内外のプレイヤーの簡単な紹介や、appendix にネット広告の歴史を紹介してくれている。

ネット広告の歴史は、より最適な配信とより詳細な計測を行えるよう、マーケティングとテクノロジーが進化してきた歴史ととらえられるだろう。たとえば第三者配信の登場によってポストインプレッションの計測や入稿先をまたいだレポーティングができるようになった。RTB によってインプレッション単位での最適化ができるようになり、マーケティングの考え方も枠に広告をだすのではなく人にメッセージを push するという考え方に転換している。このようなプラットフォームを使い、どのようにオーディエンスとコミュニケーションするのか、現場の経験を踏まえた地に足の着いた知見が本書で述べられている。

本筋とはそれるが、個人的に興味深く読んだのは補稿の “日本のネット広告の歩み” の章だ。ネット広告はまだまだ新しい業界とはいえ 10 年以上の歴史はあり、その間にテクノロジーの進化が速いスピードで行われてきた。このような内容を、歴史書といか伝記小説っぽくまとめたものがあるとしたら、ぜひ読んでみたいと思った。

基本的にネット広告の基礎知識を前提としているので、業界初心者が最初に読む本ではなく、ネット広告に携わっているが RTB は初めてという人や、RTB を使用しているがよりよく活用したいという人がターゲットだろう。ネット広告そのものの入門テキストとしてはネット広告ハンドブックが定番だ。